プログラム概要
化学は分子レベルで物質を扱う学問であり、物質、材料科学、エネルギーから生命、医療、環境まで、広範な学術領域の発展に本質的に関与する基礎学問です。
分子を理解し(構造を明らかにし)、分子を設計し、分子を合成し、優れた分子を創製することは、化学の大きな役割です。化学は、自然界には存在しない機能をもつ新物質を創出し、医薬・農薬、電子・電気、自動車産業など、世界の基幹産業に密着して物質文明の発展を先導してきました。化学が科学の中心 (chemistry is a center of science) と言われる所以です。しかし、対象とする事象が複雑化し、求められる機能が高度化、高難度化、また多様化するにしたがって、従来の学問体系では対応しきれない状況が生じています。さらには、社会の持続性に見合った環境調和型の物質生産が不可欠になっています。これまでの専門性をさらに深化・緻密化させる一方、領域を超えた学問体系を広く、深く理解することが、このような状況の解決に必要とされる時代になりました。
東北大学の化学は、さまざまな事象を分子レベルで解明し、有機化学の分野を中心に、世界を先導して来た歴史的な背景があります。その成果は、新規触媒開発、天然物合成、新薬開発、バイオセンシングなど化学のあらゆる分野に及んでいます。新たにスタートする統合化学国際共同大学院の狙いは、東北大学が強みを有する化学を基盤として、物理、生命、情報等の異分野の領域に踏み込み、化学の総合知に立脚して新たな課題に対応しうる学際的な研究を遂行することにあります(図参照)。そのため、本プログラムでは、専門と学際領域のバランスの取れた教育体制を構築し、未来の科学を切り開くイノベーションにコミットできる課題対応能力の高い人材を育成します。
統合化学国際共同大学院プログラム
2022年4月設置
本プログラムは博士課程前期2年生からの4年間を基本とする課程であり、理学研究科の化学専攻と工学研究科の応用化学専攻、化学工学専攻、バイオ工学専攻の3専攻、及び薬学研究科・農学研究科・情報科学研究科・生命科学研究科・環境科学研究科の5研究科の全専攻に所属する大学院生から選抜します。通常のカリキュラムに加え、海外連携校での6ヶ月の国際共同研究や国際サマースクールの企画など国際的なリーダーシップを養うためのメニューを設けます。
分野融合型の教育には、上記7研究科に加え、多元物質科学研究所、金属材料研究所、材料科学高等研究所、環境保全センター、データー駆動科学・AI教育研究センターの教員が参加し、研修先の海外連携校の教員があたります。本プログラムでは、本学内外の教員を結集した国際的かつ密接な共同指導体制を構築して、化学における俯瞰的視野と実践力を養う統合的な大学院教育を展開します。
海外連携教育研究機関との積極的な研究・学生交流を行うことにより、学術的分野からフィールドに至る広域的な分野において、高い専門性を有し国際的に活躍できる人材の育成を目指した実践的国際教育が可能となります。
講義は英語により行われ、QE(Qualifying Examination)の導入による教育の質の保証を行います。また、プログラム学生が学業に専念できるように経済的支援や海外渡航支援など、様々な支援を用意します。
人類が直面する多くの問題は、分子レベルでの解決が必要なものが多くあります。そのような世界的問題を化学の力で解決することのできる人材を育てることは喫緊の課題です。基礎から応用まで、また他領域まで幅広くカバーする教育プログラムと、連携先から招聘する様々なバックグラウンドをもつトップレベルの教員も参画した先進的かつ全分野網羅的な教育を行う国際教育拠点を形成して、化学及びその学際領域で世界最先端の学術研究や技術開発を牽引し、国際社会で自立して活躍できる研究者、技術者の育成・輩出を目指します。意欲ある学生の参加をお待ちしています。
東北大学における
化学研究を行っている部局
化学は物質を扱うため、多くの部局で研究が行われている
構成員:化学系D2討論会参加研究室
主催者+情報科学系教員
東北大学のスケールメリットを生かした発展の期待
化学の多様性への対処
プログラム長より
理学研究科
林 雄二郎 教授
化学は分子レベルで物質を扱う学問であり、物質、生命、医療、環境、エネルギーから材料科学まで、広範な学術領域の発展に本質的に関与します。対象とする事象が複雑化し、求められる機能が高度化、高難度化、また多様化するに従い、従来の学問体系では対応しきれない状況が生じています。専門性をさらに深化・緻密化させる一方、古典的な領域を超えた学問体系を広く、深く理解することが、新たな科学を切り開き、イノベーションの創出には必要と考えられます。
統合化学国際共同大学院では、本学の強みである化学分野における教員を結集し、海外研究期間とも連携して、化学の多様性を統合した研究・教育を行います。これにより、新たな研究領域を切り拓いてイノベーションを牽引でき、世界が直面している問題を解決できる能力を有する、世界的な研究者や技術者を育成・輩出することを目的とします。
プログラム学生は、理学研究科、薬学研究科、工学研究科、農学研究科、情報科学研究科、生命科学研究科、環境科学研究科の指定された専攻の大学院生の中から選抜されます。通常のカリキュラムに加え、6ヶ月の海外研修や国際サマースクールの運営などにより、国際性を養います。また、経済的支援、海外渡航支援などの、様々な支援を受けることができます。
意欲ある学生の積極的な参加を期待しています。
ディプロマポリシー
本プログラムでは、以下のような能力をもつ研究者を育成します
- 化学の専門分野の高度な知識に加え、その周辺の一般的な科学に関する俯瞰的視野と思考能力。(知識力)
- 修得した知識を基盤として、自らが開拓した課題に挑戦し、適切な研究計画を立案して課題を遂行する能力。(知識展開力と課題遂行力・解決力)
- 異なった背景をもつ他者との間でも十分な主張、議論、意見交換ができるコミュニケーション能力と、研究成果を社会に簡潔・明解に発信する能力。(研究統括力とコミュニケーション・アウトリーチ力)
- 国際的な舞台で、上記の修得能力を発揮し、国際的規模のプロジェクトを先導・統括する能力。(国際的な研究先導力・統括力)