【短期海外研修 2024.11.25-12.2】グラーツ大学 / シェフィールド大学 : 佐野公亮
2024年11月25日から12月2日にかけ、現地の研究者との交流および長期研修先の探索を目的として、オーストリアとイギリスの二か国で短期海外研修を行ってきました。
まず訪れたオーストリアのグラーツでは、化学機器メーカーであるAnton Paar社の本社を訪問しました。オフィスには各種飲み物が用意されたドリンクコーナーがあるほか、幼稚園が併設されており、社員にとって働きやすい環境が整えられている点が印象的でした。また本社工場も案内していただき、実際に製品を作っている現場を見学しました。工場には材料を加工するための大規模な機器類が整然と配置され、大小様々な部品がナンバリングされて棚に収められているなど、機能的で清潔感漂う雰囲気を感じました。さらに、製品部門の社員の方々とお話しし、最新型のレオメーター(流体やゴムなどの粘弾性を測定する装置)をはじめとする様々な製品についてご紹介いただきました。ナノ粒子合成を専門とする私にとって、今回の訪問はこうしたキャラクタリゼーション手法への理解を深めるまたとない機会となっただけでなく、社員の方々の自社製品に対する抱負や知識と熱意にも感銘を受けました。

Fig.1:Anton Paar本社のエントランス
さらにグラーツでは、小角X線散乱 (SAXS) 測定を用いた構造解析の第一人者である、グラーツ工科大学のOtto Glatter 教授とディスカッションを行いました。SAXSとは、数~数十ナノメートルの構造体の大きさや集合・配列状態などを分析するために用いられる測定手法の一つであり、電子顕微鏡観察とは異なり分散系や界面における三次元的な構造解析が可能です。私は以前から、水分散状態のナノ粒子の動的構造制御を目的として研究を行っていたことから、SAXS測定および解析技術の習熟が課題となっていました。同氏とのディスカッションでは、最新鋭の研究成果についてもお話しいただき、今までになかった知見を得ることができました。
その合間には、街を散策することもできました。歴史ある教会を見学したり、オーストリア発祥のザッハトルテを味わったりすることができ、異国の文化に触れる良い経験にもなりました。

Fig.2:グラーツの街並み
次にイギリスのシェフィールド大学に向かい、かねてより共同研究を行っていたXiangbing Zeng氏とのディスカッションを行いました。Zeng氏もSAXSによる構造解析のスペシャリストであり、特に電子密度マップの再構築による構造の可視化に関して独自の知見を持っておられます。今回の訪問では、私の実験結果を踏まえ、今後の研究方針などについて、有益かつ建設的な議論を交わすことができました。Zeng氏には、近くのイギリス式庭園にも案内していただきました。ちょうど冬の時期だったこともあってか、クリスマスマーケットも開催されており、楽しい時間を過ごすことができました。

Fig.3:シェフィールド大学

Fig.4:クリスマスマーケットの様子
今回の研修を通じて多くの研究者と交流を深め、意見交換を重ねる中で、研究を進めるうえで役立つ知識を得ることができました。また、博士課程に長期研修を控える身として、海外での実践的な経験を積むことができたことは、得難い貴重な機会となりました。一方で、英語でのコミュニケーションという点では、自身に足りない部分が多くあることも痛感しました。この経験を糧に、今後の研究活動や言語学習に一段努力していく所存です。