GP-Chem 東北大学 統合化学国際共同大学院東北大学
統合化学国際共同大学院

【短期研修:2023.7.2-7.6】 アメリカ,ニューヨーク:金澤佑月さん

短期研修としてニューヨーク州立大学、ストーニーブルック校、Tad. Koga 研究室を訪問してきました.ポリマー修飾無機ナノ粒子に関する共同研究の打ち合わせに参加し,同時に,研究室所属学生の皆さんを交えて,研究交流会を行いました.英語での研究紹介と議論にはまだ慣れないため,円滑にとはいきませんでしたが,研究分野もやや異なる海外の学生らからの率直で視点の異なる意見は,今後の研究を考える上で新たな見方をもたらしてくれるものでした.Koga 研究室の皆さんは,放射光解析と分子動力学(MD)シミュレーションを用いて,ポリマーを中心とした材料のナノスケールでの解析を行っているのですが,私の研究テーマであるナノ粒子合成にはこういった高度な解析技術によるフィードバックが不可欠です.一方で,解析の専門家からしてみれば,仮説の検証のための,いわばオーダーメイドの材料の提供が必要であり,相互に技術を提供し合うことで革新的な材料開発に繋がることが期待されます.実際にそのような体制で現在共同研究がなされているわけですが,現在共同で進行中のテーマ以外にも,コラボレーションの可能性は大いにあるのだなと感じられました.その可能性に出会えたことと,将来の共同研究に繋がる関係性を築けたことは,大きな収穫となりました.また印象的だったのは,彼らは学年や学生・教員の立場関係なくフラットな関係性であったことでした.お互いにリスペクトは持ちつつ,一研究者として対等に接する雰囲気が,活発な議論や積極的な挑戦に繋がっている感じがあり,日本の研究・教育現場との違いを感じました.願わくは私はそうした雰囲気を,自身の研究室でもつくりだせたらと思いました.

 

Koga研究室メンバーとの研究交流会の様子

 

滞在の2日目,3日目にはストーニーブルック大学が共同で管理運営を行うブルックヘブン国立研究所(BNL)の放射光施設 National synchrotron light source Ⅱ(NSLS-Ⅱ) にも訪れ,ビームラインの見学と,施設職員・研究者の方々を交えたセミナーでの研究発表を行いました.セミナーでは僭越ながら,ナノ粒子合成手法の探索に関する研究を,放射光解析のエキスパートの方々に向けて発表させていただきました.限られた時間で自分の研究を初めて見る人に,わかりやすく,英語で伝えることの難しさを痛感しましたが,材料解析に関する貴重な助言も得られ,大変良い経験になりました.

ビームラインの見学では,現在29あるビームラインのうちの10近くを回り,実際に行われた研究例を交えて,装置構成や測定のノウハウを学ばせていただきました.2024年からは東北大学青葉山キャンパスに建設された次世代放射光施設「ナノテラス」が稼働予定ですが,利用の機会があればこの知見をぜひとも活用できればと思います.設備にも圧倒されましたが,世界トップレベルの施設で研究をする人々の雰囲気を体感できたことにも,非常に価値があったと思います.ビームラインを担当する研究者の方々は,当然ながら非常にアクティブで熱意に溢れており,面白いと思ったことに一心に取り組み,そしてそれを心の底から楽しんでいるのだと身に沁みて感じました.

 

放射光施設 NSLS-II

 

NSLS-II でのセミナーの様子

 

7月のアメリカはサマータイム期間ということもありとても日が長いのですが,夕方からは研究室のメンバーとビーチに行ったり,NSLS-Ⅱでプロジェクトマネージャーを務める方のご自宅でのBBQに参加させていただいたりしました.ストーニーブルックはニューヨーク市街から東側に伸びたロングアイランド島の中腹に位置し,島の海岸一帯に続くビーチまですぐに行くことができます.学生らは繁閑の波はあれど,夕方からよく遊びに行ったりするそうです.日常会話ではより一層ボキャブラリーが低減してしまう私にも,ビーチサッカーやビーチバレーをするなどして楽しく遊んでくれました.日が暮れ始め,潮が引いた海で大きなカブトガニを見つけたのは良い思い出です.BBQ にはNSLS-Ⅱの研究者の方々や先生のご家族など,たくさんの人が集いました.出身もキャリアも様々な人々とお話させていただき,月並みな感想ですが自分の人生観の狭さを感じさせられました.研究室の学生さんもそうでしたが,Koga 先生の息子さん,娘さんは私と同年代ながらも行動範囲や人生における選択のスケールがとても広く,今回の渡米が初の海外経験である私とは比べ物にならないほど世界が広いのだなと感じました.まだ比較的若いと言える学生のうちにこうした価値観の拡大に繋がる経験ができたことを,とても幸福に思います.

 

ラボメンバーと訪れたロングアイランドのビーチ

 

以上が今回の滞在の概要になりますが,共同研究や将来のキャリア展望に繋がる成果,学術的な学びの成果もさることながら,より根底にあるマインドの面での大きな成長が達成できたと感じます.今後グローバルに研究活動を展開して行く上での,言語面を含めた心理的な障壁を払拭できたような感じがしました.もちろん,研究も英語もまだまだ未熟なので,今回の経験をモチベーションに,今後より一層励んでいきたいと思います.

 

 

ページトップへ